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サ行の発音が気になったときに整理しておきたいこと
サ行の滑舌が気になるとき、前歯のすき間といった歯並びだけでなく、舌先の位置や息の流し方も同時にかかわっていることが少なくありません。「話すときに言葉を選んでしまう」と一人で悩む前に、まずは音ができるしくみと、原因の見分け方を確かめましょう。この記事では、大人と生え替わりの時期のお子様での見方のちがいや、歯科と言語聴覚士へ相談するめやすをまとめます。
この記事の要点まとめ
- サ行の発音には、前歯の位置やすき間、舌先の置き場所、息の流れがかかわり、聞こえ方だけでは原因をしぼりこめません。
- 歯並びと舌の癖はおたがいに影響することがあり、歯列矯正だけで発音が変わるとは限りません。舌や唇の筋肉の使い方を整えるトレーニング(口腔筋機能療法:MFT)をあわせて行う場合もあります。
- 生え替わりの時期の一時的な変化と、大人の長く続く悩みを分けて考え、歯科や言語聴覚士などへの相談を考えましょう。
サ行の音はどう作られ、どこで崩れやすいの?

サ行は、舌先と前歯の近くにできるせまいすき間を息が通り、こすれて出る音です。そのため、歯の位置・舌先の位置・息の流れのどれかがずれると、音がゆがむことがあります。まずは発音の仕組みと、聞こえ方の違いから確認していきましょう。
舌先と前歯の間にできる「細い息の通り道」がサ行の音をつくる
サ行を発音するとき、舌先は上の前歯の裏側近くに持ち上がり、歯との間にわずかなすき間を作ります。この狭いすき間へ向かって息を前へまっすぐ吹き出すことで、空気がこすれる摩擦音が生まれます。
つまり、前歯の位置やすき間、舌先の高さ、息の強さという3つの要素がそろって初めて明瞭なサ行になります。そのため、どれか1つでもバランスが崩れると、息が余計に漏れたり音が濁ったりする原因につながります。
息が前から漏れる・横から抜ける・舌が見える――聞こえ方の違い
音の崩れ方にはいくつかのパターンがあります。前歯のすき間が広すぎて息が「シュー」と広がる音、舌の脇から息が抜けてこもったように聞こえる音、あるいは舌先が上下の歯の間から前に出て英語の「th」に近い響きになるケースです。
ご自身の声を録音して聞き直す際、こうした聞こえ方の違いは一つの手がかりになります。ただし、音の印象だけで歯並びと舌のどちらが主な原因かを決めつけることはできないため、口の中の動きと合わせて見ることが求められます。
前歯のすき間と舌の癖、サ行に影響しているのはどちら?
サ行の不明瞭さは、歯並びと舌のどちらか一方ではなく、歯の位置と舌の使い方が互いに影響し合っていることがあります。両方の視点から状態を整理することが大切です。
すきっ歯・開咬・出っ歯など、息が漏れやすくなる前歯の状態
前歯にすき間がある「すきっ歯」や、前歯が前方へ傾いている状態では、息の通り道が広がって空気が漏れやすくなることがあります。なかでも、奥歯で噛んでも上下の前歯が閉じない「開咬(かいこう)」は、舌先を前歯の裏の歯ぐきあたりに当てて出す音のゆがみや、飲み込み方のくせとの関係が報告されています1。また、歯が重なり合う「叢生(そうせい)」や反対咬合(受け口)などの歯並びの乱れも、舌の使い方や発音とのつながりが指摘されていますが、どのように関係しているかはまだはっきりしていません。
なお、見た目の歯並びが軽度か重度かという点と、発音への影響の大きさは比例するとは限りません。わずかなすき間でも舌の当て方しだいで音が変化することがあります。
舌先の置き場所・低位舌・口呼吸など歯並び以外の要因
歯並びが大きく乱れていなくても、普段の舌の位置や口周りの習慣がサ行に影響することがあります。たとえば、安静時に舌が下あご側に落ちている「低位舌(ていいぜつ)」や、口がぽかんと開いて口呼吸になっている状態です。
また、つばを飲み込むときに舌で前歯を強く押す癖も、なめらかな動きを妨げる要因になります。発音を意識しすぎて舌全体に余計な力が入ると、動きがぎこちなくなることもあります。
「歯並びを治せば発音も治る」とは言い切れない理由
舌で前歯を押す癖が歯並びを乱し、変化した歯並びがさらに舌の位置を不自然にするという相互作用は少なくありません2。そのため、歯列矯正で歯の位置だけを整えても、長年の舌の癖が残っていれば発音の変化をすぐに見込めるとは限らないのです。
歯科では、舌や唇の筋肉の使い方を整える口腔筋機能療法(MFT)をあわせて行う場合があります。開咬のお子様では、トレーニングで舌の動かし方がよい方向に変わることがありますが、矯正とあわせたときにどこまで役立つかは、まだ調べている途中です3。
ポイント
サ行の発音には前歯のすき間と舌の動きの双方が関わっており、歯並びを整えるだけで発音の癖まで自然に変わるとは限らない点に注意が必要です2。
生え替わり中のお子様と大人、同じ基準で考えてよい?
前歯が生え替わる時期のお子様は一時的にサ行が乱れやすいため、大人の滑舌の悩みと同じ基準で判断しない方がよいでしょう。親子で似た発音をしていても、背景にある原因が異なる場合があります。
前歯が抜けている時期のサ行の乱れは一時的なことも
乳歯が抜けて永久歯が生えそろうまでの時期は、前歯に物理的なすき間ができるため、息の通り道が広くなってサ行が抜けやすくなります。多くは永久歯が伸びてすき間が閉じるにつれ、発音も落ち着いていきます。
ただし、前歯が生えそろったあとも息がもれる場合や、話すときに舌が歯のあいだから出るくせが目立つ場合、指しゃぶりや口で息をする習慣があるときは、一度専門家に相談するめやすになります。
大人で長く続く場合に振り返りたい3つの点
大人の場合は、まず次の3つの視点を振り返ってみてください。
- 気になり始めた時期:昔からなのか、最近になって急に言いにくくなったのか
- 前歯や噛み合わせの感覚:以前より前歯のすき間が広がった、または奥歯は当たるのに前歯が閉じない感じがないか
- 日常の口元の状態:仕事中や集中しているときに口が開きっぱなしになっていないか
もし最近になって急に呂律が回りにくくなった場合は、歯並びではなく脳や神経の病気も考えられるため、早めに脳神経内科などを受診しましょう。手足のしびれや顔のゆがみなどを伴うときは、すぐに医療機関にかかってください。噛み合わせを自分でチェックする際は、鏡で「イー」と歯を見せて前歯の閉じ方を観察する程度にとどめ、自己判断で結論を出さないことが大切です。
何度も言い直させる前に、家庭で記録しておきたいこと
お子様の発音が気になるとき、その場で繰り返し言い直させると、話すこと自体にためらいを感じてしまうことがあります。家庭では指摘するよりも、普段の様子を観察してメモに残しておく方法が役立ちます。
たとえば、言いにくそうな音(サ行だけか、タ行やラ行もふくむか)、気になる場面、ごはんのときの噛み方や飲み込み方のようすです。大人の方も、自分の声の録音や気づいたことを同じようにまとめておくと、相談のときに状況が伝わりやすくなります。
どんな状態なら歯科に相談し、言語聴覚士にもつなぐべき?
歯並びや舌の位置、噛み合わせは歯科で確かめ、発音そのものの練習は言語聴覚士が受けもちます。まず歯科で口の中のようすを見てもらい、必要なときに言語聴覚士とつながるのがひとつの進め方です。
相談を考えたい目安――歯科か、言語聴覚士か
前歯のすき間や噛み合わせのずれが目に見える場合や、飲み込むときに舌で歯を押している様子があるなら、まずは歯科での確認が向いています12。一方で、歯並びの問題が目立たないのにサ行以外の音も不明瞭であったり、話し方全体に不安があったりする場合は、言語聴覚士(ST)への相談が視野に入ります。また、慢性的な鼻づまりで口呼吸になっている場合は、耳鼻咽喉科での確認も選択肢となります。
歯科で確認できる範囲と、矯正の話になったときの考え方
歯科では、前歯の位置やすき間、上下の噛み合わせ、安静時の舌の位置などを確認します2。光学スキャナー(iTero)などの機器を用いて現在の歯並びを立体的な画像で画面に映し出し、視覚的に状態を共有しながら話を進めることも可能です。
もし歯列矯正やMFTをすすめられたときも、どちらも口の中のかたちや使い方を整えるための方法です。発音がどう変わるかまでを約束するものではありません。
大人のマウスピース矯正(インビザラインなど)は、公的な医療保険が使えない自由診療です。費用や治療にかかる期間、通う回数は、歯並び全体を動かす全体矯正か、一部だけを動かす部分矯正かで大きく変わります。当院での費用や期間・回数は、診察のうえでご案内します。
また、矯正装置を付けてしばらくは違和感や痛みが出ることがありますが、多くは数日から1〜2週間ほどで慣れていきます4。ほかのリスクについても、治療を始める前に説明を受けておきましょう。
東金市の当院で親子の発音と歯並びを相談するときの伝え方
「話すときに言葉を選んでしまう」「大きな口で笑うことにためらいがある」といった日常のお悩みは、我慢せずお聞かせください。私たちは患者さまの“声”に耳を傾け、気兼ねなく会話や食事を楽しみ、笑顔でいられる暮らしを支えることが使命だと考えています。
東金市で親子の発音と歯並びについて相談される際は、家庭でメモした「苦手な音・気になり始めた時期・口の癖」をそのままお伝えください。一般的には、大人の方とお子様それぞれの状態を分けて確認します。すぐに治療を決めるのではなく、必要に応じて言語聴覚士など他の専門職への相談も含め、次の行動を考えていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯列矯正中に滑舌が悪くなってしまいました。なぜですか?
矯正装置が歯の表や裏、または歯並び全体をおおうことで、舌がふれる位置や息の通り道が変わるためです。とくにマウスピースや裏側矯正の装置を付けると、サ行やタ行などが言いにくくなることがあります。多くは、装置に舌がなれていくにつれて話しづらさがやわらいでいきます。
話しづらさや痛みが強い場合は、装置の調整などについて歯科医師にご相談ください。
Q. 口ゴボの歯並びだと滑舌が悪くなりやすいですか?
前歯や口元が前方に出ている状態では、上下の唇を閉じにくく口呼吸になりやすいほか、前歯の裏側と舌先の距離感がつかみにくくなり、サ行やパ行・バ行・マ行などの発音に影響することがあります1。ただし、口元の形態だけでなく唇の筋力や舌の使い方も関係するため、歯科で口全体のバランスを確認することが大切です。
Q. マウスピース矯正が適さないのはどのような歯並びですか?
骨格的なずれが大きい受け口や出っ歯、抜歯して大きく歯を移動させる必要がある重度の叢生、または埋伏歯(骨の中に埋まっている歯)がある場合などは、マウスピース単独での対応が難しいことがあります。適応できるかどうかは見た目だけでは判断できないため、歯科での精密検査を通じて歯科医師が判断します。
参考文献
1. Thijs Z, Bruneel L, De Pauw G et al. Oral Myofunctional and Articulation Disorders in Children with Malocclusions: A Systematic Review. Folia phoniatrica et logopaedica : official organ of the International Association of Logopedics and Phoniatrics (IALP) (2022). PMID: 34107494 / DOI: 10.1159/000516414
2. Inchingolo AD, Inchingolo AM, Campanelli M et al. Orthodontic treatment in patients with atypical swallowing and malocclusion: a systematic review. The Journal of clinical pediatric dentistry (2024). PMID: 39275817 / DOI: 10.22514/jocpd.2024.100
3. Van Dyck C, Dekeyser A, Vantricht E et al. The effect of orofacial myofunctional treatment in children with anterior open bite and tongue dysfunction: a pilot study. European journal of orthodontics (2016). PMID: 26136435 / DOI: 10.1093/ejo/cjv044
4. 矯正歯科|診療科|診療科・部門|日本歯科大学附属病院. https://www.tky.ndu.ac.jp/hospital/departments/section/orthodontics.html
日本大学松戸歯学部 卒業
2014年
医療法人 尚歯会 いさはい歯科医院 勤務
2015年
ぐみょう今井歯科医院 勤務
2019年
ぐみょう今井歯科医院 院長就任
日本臨床歯科学会
日本口腔インプラント学会
インビザライン 認定医
日本歯周病学会
厚生労働省認可歯科医師卒後臨床研修指導医
日本顎咬合学会 認定医
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